媒染

織りがひと段落して、染めたままになっていた糸を玉巻しようと思っていました。取り出してみると、色が気になって鉄媒染することにしました。最初は大分前に紅花で染めた紬糸(ゆうし)です。紅色になるまで染めるには程遠い染液の量で、ごくごく薄い桃色に染まり、使う当てなく今まで来てしまいました。思い切って鉄媒染してみると、今では使ってはいけない色名ですが、さくらの古い色名辞典によれば肌色。解説には、日本人の肌のような色、実際の肌の色よりも薄いオレンジ色を言うとあります。この色になって使いやすくなったと思える色になりました。

 

次に鉄媒染にする糸は綿糸2枷、紬糸2枷で、夏の終わりにクズで染めた糸です。苗色(薄井萌黄)の濃淡に染まって、色としてはいい色ですが、もう少しくすんだ色味にしたいと思い、これらも鉄媒染にすることにしました。媒染してみて正解と思ったのは、ほとんど白に近いと思えるほどの染まり具合だった綿糸も、薄いなりにさくら好みの色に変化しました。抹茶色(やわらかい黄緑)の濃淡に変化したそれぞれに、織への意欲が湧いてきました。玉巻した糸を並べてちょっと嬉しい気持ちになっていたところへ帰宅した娘の「お菓子みたい」の言葉を誉め言葉と受け止めて、やる気を深めたさくらです。